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その2 第九話 紅中クッキング

ผู้เขียน: 彼方
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-12-10 16:00:00

18.

第九話 紅中クッキング

 その後、紅中はキッチンを掃除した。そして――

「何か作り置きできる夕飯のおかずを作っておきましょうか。タッパーなら持参しましたのでいくつか作って冷蔵庫に入れておこうかと思うのですが。どうでしょう、ご主人様」

「ああ、それは有り難いです。ぜひともよろしくお願いします」

「では、今日はこれが終わったらご遊戯の時間にいたしますか」

「いいですね!」

────

──

 フンフン〜♪ 

 ごきげんで鼻歌しながら料理をする紅中。しかしその鼻歌はどうやら『剣の舞』を歌っているようだ。紅中の鼻歌をリビングで聴いていた章生と士郎は(料理しながら剣の舞って、どういう心境なのそれ。せわしないじゃん)と内心思ったという。それはそう。

「できました。そしたら片付けますね。タッパーにつめて冷蔵庫に入れておきましたので」

「何から何までありがとうございます」

「いえいえ、私は雇われたのですから当然の仕事です。それに育ち盛りの子たちには足りないかもしれないので、もう一品メインは用意した方がよろしいかと。もう一つ作りますか?」

「いや、もう麻雀しましょう」

「そーだよ、今からやれば半荘2回やれるかもしんないし!」

「そういうことでしたら……わかりました。やりましょう」

「士郎。宏を呼んできてくれ」

「はーい」

ドタドタドタドタ

「兄ちゃーーーん。麻雀やるよーー。兄ちゃーーーん」

「わかったーー。いまいくー」

(宏さんから初日のトゲトゲした感じがもうなくなってきました。もしかしたらあの日は機嫌が悪かっただけかも知れませんね。さあて、今日も目一杯頭を使って接待麻雀をがんばりますか!)

────

 対局開始。

(さて、先日はご主人様にトップを差し上げましたので、今日は宏さんか士郎さんを勝たせましょうか。あとはまあ、適当でいいですね。それ)

打二

「…ロン」

宏手牌 ドラ⑤

三四③④⑤⑥⑦⑧34599

「2000」

「はい(あっ、安目に打ってしまいましたね。これは失敗)」

(……しかし宏さんはこの手をダマテンにするんですか。これはほとんどの人がリーチしますよ。ドラ吸収や赤などの変化を考えたのかもですが、なんにしてもかなりの慎重派です。けっこうやりづらい相手かもしれませんね)

 などと前局のことを考えていたら……

「リーチ」

(あっ、ご主人様からのリーチですか。しかし残念ながら私の計画ではご主人様は今回負けてもらいます。このリーチはアガらせませんよ)

 依頼主のリーチだ。単なる一発消しなどでしらけさせるわけにもいかない。かと言って一発ツモされるのも困る。なので……

(リーチに通る牌であって尚且つ下家の士郎さんが絶対にほしいであろう牌は……)

打四

(士郎さん。鳴いて下さい)

「チー」

(そうそう、良い子です!)

 接待麻雀打ちは決して『一発消し』はしないものである。雇い主がしらけるような行動は一切取らない。一緒にやるのが楽しい。同卓するとワクワクする。という相手を演出しなければならない。なので一発を消す時は『消させる』しかないのだ。こうやって場をさり気なくコントロールするのも紅中の得意技のひとつであった。

────

 半荘終了。

 この日は士郎が猛練荘してトップ。2回やる予定でいたが長引いたので半荘1回でお開きとなった。

(ふう、うまくいきました。続きはまた明日ですね)

「それでは私はこれで。また明日よろしくお願いします」

◆◇◆◇

 井之上家の夕飯

「ねえ、兄ちゃん。チュンさんが作り置きしてってくれたおかず食べてみようよ」

「そうだな」

 カパッ

「何それ」

「いや、おれにもわからん」

 なにか見た事ない黒い物体がタッパーには詰められていた。肉も混ざっているのはわかるが、なんなのかはわからない。

「まあ、あのチュンさんの作ったものだし間違いはないんだろうけど……ねえ」

「そう……か?」

「そうだよ! ねえ、お父さんもそう思うでしょう?」

「思う、が……。それは一体?」

 章生は思い切って一口食べてみることにした。

「……いただきます!」

パクリ

「………………薬膳?」

「それはつまりどんな味なの」

「八角とか入ってると思うんだけど、これは苦手な人多いと思う。そしてベースとなる味付けも……あまり、なんていうか、おいしくない……?」

「えー、あのチュンさんがそんなの作るかなあ。料理も手際よくやってる風に見えたよ? お父さんの口に合わないだけじゃないの〜。どれ」

パクリ

「まっず! いや、お父さん! もっとストレートに言ってよ! 不味いじゃんこれ」

「スマン。言いにくかった。これ、不味いな」

「不味いよ! 兄ちゃんは食べない方がいいよ」

「そんなにか。すこーしだけつまんでみるか」

チョイ

「いや、まっっっず!!」

 紅中の唯一の欠点。それは、紅中は実は味音痴なのだ。本人はその事に気付いてはいないのだが。

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